社長のつぶやき
2018年6月29日
ゲーム・チェンジャーの競争戦略
早稲田大学ビジネススクールの内田和成教授は、歯に衣着せぬ辛口トークで知ら
れ、以前はボストンコンサルティングの日本代表を務められ、「世界で最も有力
なコンサルタント トップ25人」にも選ばた方です。
私は、そんな有名な方だとも何も知らず、知人を通じて初めてお会いさせて頂い
た時に、GMS(ゼネラル・マーチャンダイズ・ストア)再生の自論を1時間ち
かくもぶつけてしまいました。無知ほど危険なことはありません。私の話が一通
り終わると、内田先生は一言「それは、無理」と仰られました。その後、日を改
めて内田先生の研究室を訪ね、私の自論の問題点やビジネスモデルだけでは解決
できない構造変化についてご教示頂きました。
あれから10年、その内田先生のお話を拝聴する機会を今月上旬に得ることがで
きました。
『多様化する購買行動と食品小売業の戦略』と題されたシンポジウムの中で、内
田先生は『イノベーションのトライアングル ~企業と消費者の進化をもたらす
もの~』というテーマでご講演されました。
内容が濃く、1時間があっという間だったのですが、その中でも特に「ゲーム・
チェンジャーの競争戦略」のお話が印象に残りました。
ゲーム・チェンジャーとは、もともとサッカーや野球などのスポーツで、試合の
流れを一気に変えてしまう選手やそのプレーのことを呼ぶのだそうですが、これ
が転じてビジネスの分野において、旧来までの市場の環境やルールを急激に変え
てしまう製品や企業のことを指します。
デジカメや電子辞書、カーナビなどの市場における、スマートフォンやアプリの
台頭がまさにそれに当ります。
そして、内容は「ゲーム・チェンジャーの競争戦略」(内田和成著 日本経済新
聞出版社)に詳しいのですが、内田先生はこのゲーム・チェンジャーを以下の4
つに分類されています。
①秩序破壊型(Breaker)
既存の製品やサービスを新しい儲けの仕組みによって提供し、競争のルール
を一変させてしまう方法です。既存の儲けの仕組みを無力化してしまいます。
事例として、ゲーム業界におけるスマホゲームの出現が挙げられています。
今まで、ニンテンドーDSやPSPといったハードを購入しなければ遊べな
かったゲームが、スマホゲームによって誰でもどこでも簡単に遊ぶことがで
きるようになりました。そして、スマホゲームアプリの企業は、それまでの
ゲーム機やソフトをユーザーに販売して儲けるのとは異なる方法で収入を得
ています。
タクシー業界とUber、ホテル業界とAirbnbの構図も同様です。
②市場創造型(Creator)
儲けの仕組みは同じで、これまでにない製品やサービスを創り出し、新しい
市場を創造する方法です。顧客が気付いていない価値を具現化するものです。
事例として、JINSのPC眼鏡が挙げられています。メガネ(製品)を売
って収入を得るという方法は同じですが、これまでのメガネ市場の「視力の
矯正」から、PCから発せられるブルーライトをカットして目の疲れを軽減
させるという機能(価値)を提供することで大ヒットとなりました。
③ビジネス創造型(Developer)
これまで存在していなかった製品やサービスを全く新しい儲けのシステムで
提供する方法です。新たな事業モデルを創り出すものです。
事例として、カカクコムの運営する「価格.com」が挙げられています。
消費者が自ら調べて見比べるしかなかった小売店舗の価格情報をPCやスマ
ホから簡単に調べることのできる人気サイトです。
主な収入源は、消費者からではなく、各小売店舗からの広告収入や「価格.
com」から各小売店舗のサイトに顧客が移動した際の手数料収入となりま
す。
パーク24の運営するコインパーキング「Times」の事業モデルもビジ
ネス創造型です。
④プロセス改革型(Arranger)
これまで顧客の負担となっていた購買に関するプロセスを省略したり、提供
するスピードを速めることで顧客価値を上げる方法です。既存の提供プロセ
スを見直したり、バリューチェーンを改革するものです。
事例として、ヘアカット専門店「QBハウス」が挙げられています。普通の
床屋さんの3分の1のスピードと価格「10分 1,000円」が売りです。
いらないサービスを省き低価格にするということでは、「俺のフレンチ」も
プロセス改革型となり、アマゾンやゾゾタウンもそうなります。
そして、内田先生のご講演の最後は、何が起きてもおかしくない時代、これまで
の競争のルールが通用しないご時勢であり、企業は今まで以上に自社の勝ちパタ
ーンを強固なものとし、必要に応じて自ら変革しなければならない。そして、ゲ
ーム・チェンジのドライバを見落とすさないことが重要で、技術革新ばかりに目
を囚われず、構造の変化と消費者の心理的変化に注意しなければならないと締め
くくられました。
私は、ご講演を視聴しながら、自社のフォーマットであるHDSの可能性につい
てあれやこれやと思考を巡らし、10年ぶりにまた内田先生の研究室で自論をぶ
つけさせてもらいたいと思いました。
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