人を大切にする経営
名著『失敗の本質』や「暗黙知と形式知」
で知られる一橋大学の野中郁次郎名誉教授が
先月の新聞で、最近よく目にする「人的資本
経営」について厳しい指摘をされていました。
人的資本経営というと聞こえはいいが人と
モノを資本として同列に扱うのは如何なもの
か、人的資本のようなスローガンには形から
入っている印象が否めない、本来、人の営み
である経営戦略に血の通った人間を取り戻す
べきであるという主旨で、本当に人を大事に
据えているのかというものでした。
これに似たことで、十数年前に経営学の先
生から教えてもらったのを思い出しました。
それは、企業の経営資源として「ヒト・モ
ノ・カネ」と表現されますが、そもそも「人」
と「物」や「金」を並列に置いて考えること
自体、経営者としておかしいのではないかと
いうものでした。
このことは、米国のベスト・バイを再生に
導いたユベール・ジョリー元社長著『THE
HEART OF BUSINESS』を読
むと一層得心させられます。
この本には「人はリソース(資源)でなく、
ソース(源泉)だ」と書かれていて、人こそ
が会社の文化をつくり、事業をつくり、パー
パスを実現する原動力であると言いきられて
いました。
人的資本経営と人本主義経営の大きな違い
が明確になります。
『THE HEART OF BUSINE
SS』のサブタイトルは「『人とパーパス』
を本気で大切にする新時代のリーダーシップ」
で、「人を大切にする」という当たり前すぎ
るゆえ念仏のように唱えられてきた感のある
ビジネスの核心を真摯に愚直に取り組むこと
が、このVUCAと言われる時代だからこそ
何よりも大事なリーダーシップであることを
思い起こさせてくれる内容です。
「人を大切にする」、ビジネスの核心であ
り革新であると深く感銘を受けた一冊でした。